時期がどうやら見えてきた総選挙だが…民主党に投じようとお考えのアナタ?
民主党の政策を徹底追究――まかせて大丈夫か?《検証・民主党》
(東洋経済オンライン 2009年05月12日掲載)
2009年5月18日(月)配信
民主党は小沢一郎代表の秘書逮捕による支持率低下に歯止めをかけるために、今度の総選挙では得意とする年金問題で勝負を賭けるつもりのようだ――。
民主党の選挙戦術について、こんな観測が持ち上がっている。
裏づけとなる事実はいくつかある。基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げることを盛り込んだ国民年金法等改正法案の国会審議で、民主党議員が、今の年金制度への攻撃を強めているのだ。
「社会保障の核である年金の信頼は地に墜ちた。現在の年金制度は100年安心と本当に言えるのか」(長妻昭衆議院議員=民主党「次の内閣」ネクスト年金担当大臣)。
「100年間にわたって、現役時代の所得代替率50%を維持できるのか。守ることに自信がないというのなら、国民は何を信じていいのか」(山井(やまのい)和則衆議院議員)。
現在の制度や政策を激烈に批判し、返す刀で抜本改革の必要性を国民に印象づけることは、民主党が得意とする戦術だ。
たとえば2004年の参議院選挙では、直前に与党が年金改革法案を強行採決したことをやり玉に挙げ、「100年安心のPRはまやかしだ」と批判を繰り広げた。また、07年の参議院選挙では年金記録問題を前面に出して政府の失策を追及。04、07年とも選挙で大勝した。
危うい高速道路無料化 重要政策の議論が不足
今回はどうするのか。直嶋正行・民主党政策調査会長は、「年金改革は政策のいちばんの目玉」と言い切っている。政権獲得後の主要政策に関する「改革工程表」では、年金改革は4年後の「完全実施」を予定している。
とはいえ年金改革は簡単ではない。制度設計が難しいうえ、これまでの保険料の納付履歴を無視できないため、新制度に完全に移るまでには移行期間として数十年が必要だ。いったん制度に手をつけると、元に戻すのも難しい。政権交代のたびに制度を変えるわけにもいかないので、他党との十分な協議が必要となる。
年金改革は、ほかの社会保障制度にも影響を及ぼす。民主党は消費税全額を新たに創設する最低保障年金の財源に投入するとしているが、その場合、高齢者医療や介護の財源をどうやって確保するのか。直嶋政調会長は「特別会計を含む総額210兆円の予算の総組み替えで十分に対応できる」と語るが、大丈夫なのだろうか。
環境や道路政策でも、問題含みだ。菅直人代表代行は4月8日の朝日新聞朝刊で「高速道路料金の無料化はあらかじめ準備すれば3カ月で実現できる」と発言している。だが、高速道路無料化は、民主党が掲げるガソリン税の暫定税率廃止とともに、CO2の排出量増大を引き起こす可能性が高い。京都議定書での削減目標達成が困難になれば、税金を投入して海外から新たに排出権を買ってこなければならなくなり、国民に予期せぬ負担増をもたらすおそれがある。
前原誠司副代表が危惧するように、JRなどの経営に打撃を与える可能性もある。
また、無料化した場合、「40兆円に上る高速道路建設の債務をどうするのか」(田中一昭拓殖大学名誉教授)という懸念もある。
年金改革(所要額5兆8000億円)や子ども手当(同5兆3000億円)のように、多額の財源を必要とする政策も少なくない。財源が確保できなければ、それらの政策を実施することはできない。
驚くべきことに、民主党内ではこうした問題についてきちんと議論されていないのだ。医療の充実など大型の公約が次々とブチ上げられる一方、財源については「予算の総組み替え」でいくらでも捻出できるかのような説明が繰り返されてきた。
世論調査では「政権交代」を支持する国民は少なくないが、多くの国民は民主党の公約の中身を熟知していない。財源となるとなおさらだ。
悪いことは言わない。またの機会になさることをお勧めする。
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