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2008年7月31日 (木)

【北京五輪】やっぱり危ない

中国各地で爆破事件・暴動激発
やっぱり危ない!北京五輪

(2008年7月31日(木)0時0分配信 読売ウイークリー
 掲載: 読売ウイークリー 2008年8月10日号
 文=読売ウイークリー 菊池嘉晃)

「平和の祭典」まで秒読みとなった中国で、路線バスの連続爆破事件が起きた。暴動も頻発している。腐敗した役人や“超格差社会”、物価高騰などへの不満が庶民に渦巻き、チベット、ウイグルなど少数民族の反発も根強い。煮えたぎるマグマを抱えた“危険な五輪”が8月8日に幕を開ける。

 「今年は災厄が続く不吉な年になるかもしれない」

 今年前半から中国の巷では、そんな話がささやかれてきた。中国では、国家的に大きな動きがある年には大事件や大災害が起きるという迷信がある。実際、旧正月の大寒波に始まり、3月のチベット暴動、5月の四川大地震、そして生活を直撃する食品価格の前年比2割近い高騰――と、この心配が次々と現実になっている。

 「北京五輪の本番でも何かが起きるのではないか」

 との不安もよぎるなか、五輪を18日後に控えた7月21日、雲南省の昆明市でバス連続爆破事件が発生した。中国紙などによれば、2件とも男が黒いビニール袋を車内に置いて間もなく爆発が起きた。事件の直前、複数の市民に「このメールを見た人はバスに乗らないように」と、特定のバス路線の番号を挙げて警告するメールが送られたとの情報もある。

 中国外務省の劉建超報道局長は22日、記者会見で「北京五輪と関係しているとの証拠は見つかっていない」と述べた。テロ事件かどうかは、現段階では不明だが、中国問題に詳しいジャーナリストの富坂聰氏は、こう推測する。

 「爆発の直前、少数民族らしい不審な男女がバスを降りたという情報もある。それが事実なら、中国からの分離・独立などを目指す少数民族による可能性もあります。その場合、厳戒態勢の北京は難しいので、警備の手薄な地方を狙ったのかも知れない。一方で、現状に強い不満を持つ庶民も多いので、そうした人々と爆発物の扱い方を知る退役軍人らが一緒に起こした可能性も考えられると思います」

 一方、石田収・筑波学院大学教授はこう話す。

 「中国の現体制に不満な勢力にとって、世界の関心が集まる五輪は自己主張を行う格好の舞台。ここを逃したら、次に世界の関心が中国に集まるのは何年か先になってしまいます。今回の事件の詳細は分かりませんが、そうした反体制勢力が五輪期間中を含めて同様の事件を起こす可能性は十分にあります」

腐敗役人に反感鬱積
 犯人が誰にせよ、この爆破事件が中国当局に与えた衝撃は極めて大きい。しかも、香港メディアなどによると、爆破事件は7月に入って、すでに湖南省(2日)と河北省(9日)でも発生。地方政府事務所と警察署がそれぞれ標的になっているのだ。これらは、分離・独立をめざす勢力によるテロ行為というよりも、地方行政・治安当局に不満を持つ人物による犯行の可能性が考えられる。

 さらには、この1か月ほどの間に、中国各地で報じられただけで7件もの大規模な暴動が発生している。こうした暴動は以前から多発しているが、ここ1か月ほどは数日に1件というハイペース。五輪直前で報道される比率が増えたためとの見方もあるが、特徴的なのは、暴動の場合も警察や地方政府への抗議などがきっかけになっていることだ。

 6月28日に貴州省で住民数万人が警察本部を襲撃した暴動は、女子中学生に対する「強姦」事件で、警察が地方政府幹部と関係のある容疑者をかばって事件を隠蔽しようとしているとの疑惑が広がったことが背景にあった。7月17日の広東省の暴動は、市民が治安当局者に殴り殺されたという情報が発端だったと報じられている。

 こうした疑惑や情報が、なぜ大規模な暴動にまで発展するのか。各地域事情も介在しているが、どこにでも共通するのが、地方政府や警察・司法関係者らに「腐敗」が蔓延し、住民らの反感が一触即発のレベルにまで高まっていることだ。その腐敗ぶりは、日本では想像もつかないひどさだという。

 中国では、許認可権限を持つ地方政府の役人が、業者などから億(円)単位の賄賂を受け取るのが日常茶飯事だという。額が数十億円にのぼる収賄事案も珍しくなく、「愛人」を賄賂として受け取るケースもあるという。今年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)での報告によれば、胡錦濤政権の第1期(2003~07年)の5年間で、収賄など汚職事件の数は17万9696件、立件されたのは20万9487人にのぼる。

 賄賂は単なる汚職にとどまらない。本誌6月15日号でも報じたように、四川大地震で多くの学校や公共施設が倒壊した一因にも、役人への賄賂が“一役”買っていた。無残な倒壊の多くは「おから工事」と呼ばれる手抜き工事が原因とみられているが、前出の富坂氏によれば、

 「建築業者らは、公共工事受注のために行政幹部らに贈った莫大な賄賂の分を、工事費用から差し引くのが通例で、そのため手抜き工事がしばしば行われる」

 という。このほかにも、地方政府幹部が、業者と結託して再開発計画を進め、わずかな補償金で予定地の農民らを強制立ち退きさせるケースも後を絶たない。以前から各地で土地紛争が原因の暴動やトラブルは頻発しており、7月15日にも広西チワン族自治区で、強制立ち退きをさせられた農民らが大規模抗議行動を起こしている。

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