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2008年7月26日 (土)

【北京五輪】チケットは?

谷亮子も星野ジャパンも現地で応援できない!?
北京五輪「闇チケット」を日本人に高値で売りつける現地ブローカーに中国当局の影
(2008年7月25日(金)0時0分配信 SAPIO
 掲載: SAPIO 2008年8月23日号
 文=野村康之(ジャーナリスト))

《北京五輪をボイコットせよ》とは、中国の人権侵害を問題にした世界的な抗議のスローガンである。五輪の舞台で世界に対して〝改革開放〟や〝経済発展〟をアピールする表の顔と、未だに民族浄化や外交謀略を繰り返す裏の顔は、確かにあまりにも違いすぎる。しかし、この国の無法ぶりは、表の顔であるはずの「五輪パフォーマンス」にもにじみ出ていた。こともあろうに、五輪観戦チケットを人質に取り、日本人の懐を標的にしてきたのである。

 昨年、日本人の海外旅行者は4年ぶりに減少した。4年ぶりとはいっても、それまでの3年間も、9・11テロやSARSの影響で激減した人数が少しずつ戻っていただけだから、こんなところで早くも回復が腰折れしているようでは、旅行業界が真っ青になるのも当然だろう。

 そんな業界が一縷の望みをかけるのが北京オリンピック特需である。チベット問題や四川大地震、原油高による航空代金急騰などの足かせはあるものの、なにしろ4年に一度の大イベントが隣国・中国で行なわれるのである。最大手のJTBなどは、早くから前回・アテネ大会の3倍以上にあたる1万人分のツアーを計画して腕ぶしていた。

 ところが、である。

 開会まで1か月あまりに迫った6月下旬、本誌記者が同社スポーツデスクに電話してツアーに申し込もうとすると、こんな力ない言葉が返ってきた。

「女子柔道ですか・・・谷亮子選手の出場する48㎏級は、今のところツアーを組む予定がありませんので・・・」

 え? 〝最も金メダルに近い日本選手〟を応援するツアーが、JTBにない?

「チケットが全く手に入らないのです。お問い合わせの多い開会式、閉会式参加のツアーも、ご用意できる分はすでに完売しております」(同デスク)

 キャパシティに限界があり、世界中が見たがる開会式、閉会式がプラチナ・チケットになることはわからなくもないが、世界的には決して人気競技ではない女子柔道のチケットが、最も見たがる日本人の手に届かないというのは腑に落ちない。その後、同社は女子柔道や開会式のツアーを募集したが、いずれも定員はわずか数名だった。

 五輪チケットは、北京五輪組織委員会が一括販売している。これはどの五輪でも同じで、その中から国内販売分、公式スポンサー分などを差し引いた残りを、各国のオリンピック委員会からの要望を受けて国ごとに配分するのが通常のやり方だ。今回、日本オリンピック委員会(JOC)は、JTBなど8社の公式代理店を指定し、希望する競技、チケット枚数などを集計したうえで、当初は北京の組織委員会に14万枚を要求した。

 ところが、最初に返ってきた回答は「日本には2万7000枚しか配分できない」という驚くべきものだった。チケット総数は約720万枚あり、その7割ほどを国内販売に回す計画とはいうものの、各国五輪委員会に配分するチケットも全体の約15%、100万枚以上あるとされる。隣国であり、経済力、参加選手の数などから考えても、日本に配分される枚数がアテネの半分にすぎない2万7000枚というのは馬鹿げた数字である。

 その後、JOCの〝復活折衝〟などもあって、ようやく5万8000枚あまりを確保したというのが現状なのだ。

 大手旅行代理店の五輪ツアー担当者が、ツアー希望客には決して言わない惨憺たる内情を明かした。

「アテネやシドニーに比べると、明らかにチケットが不足しています。アテネ五輪では、主催者側から日本に配分されたチケットは約5万枚でした。今回、JOCはそれを上回る5万8000枚を確保したと胸を張っていますが、そもそもアテネと北京では国内の需要が何倍も違います。こんな数でまかなえるはずがない。

 しかも不可解なのは、日本人に人気の高い種目ほど、割り当てが少ないことです。野球、水泳、柔道、体操のチケットは極端に不足していて、どの旅行社もツアーが組めずに頭を抱えている状態です」

 それが事実とすれば、いくら総数が5万8000枚あったとしても、日本のファンは門前払いも同然ではないか。まさか〝日本人がメダルを獲得するシーンは日本人には見せない〟という企みがあるとは思えないが、日本での人気種目は日本人が強い種目であり、裏を返せば他の国での人気はそれほど高くないケースが多い。女子柔道と同様に、なぜチケット配分が少ないのか理解に苦しむ。

苦しむ日本の代理店に近づく〝悪魔の囁き〟
 論より証拠。JTBに人気競技のチケット獲得状況を聞くと、「確保したチケットの総数は公表していない」としながらも、五輪ツアーがピンチであること自体は大筋で認めた(取材は6月末)。

「シドニーやアテネに比べて日本へのチケット配分が少なかったことは事実です。当社も目標枚数に達していません。野球や男女のバレーボールなどは、確かにニーズに対してチケットは足りていません。柔道や水泳の決勝、そして開会式が取れていないのもその通りです。

 ただし、オリンピックのチケットというのは各国間の綱引きという面もあり、主催者側も一気にすべて出してくるわけではありません。これから追加の要望を出し、確保できる可能性もあると考えています」(広報室)

 当初、野球などは競技場のキャパシティも大きく、その一方で参加国、競技国が少ないことから、チケットの入手は比較的簡単だとみられていた。地元・中国では「野球ファン」などは皆無に等しく、例えば日本とアメリカの試合のチケットが1万2000枚(会場の収容人数)とすれば、中国との距離的な差も考えれば、少なく見積もっても半分は日本人の手に入ると考えてもおかしくない。

 ところが、JTBの例で言えば、「星野ジャパンの予選3試合の観戦が確約されたツアーの定員は25名で、残りは1名です」(スポーツデスク、6月23日現在)という状態。〝当日でも入れる〟と言われていたはずがプラチナ・チケットになっていて、料金は4泊5日で42万5000円。1人部屋だと追加料金16万円という〝セレブ・ツアー〟なのである。

 中国側との交渉に当たっているJOC事務局では、

「現在のところチケットは5万8000枚ですが、これは今後、上積みされていくものと考えております」(国際担当)

 と、望みを捨てていないことを強調する。しかし、最初から明らかに少なすぎる配分を提示され、いざチケットが来てみれば日本の人気競技が狙い撃ちされたかのように削られている現状からすると、もはや「各国間の綱引き」といったレベルの話ではなく、意図的に日本に嫌がらせをしていると考えたほうが良いのではないだろうか。

 案の定、業界内部から聞き捨てならない「中国の謀略」が聞こえてきた。JOC公式代理店の中国関係部門幹部の証言である。

「われわれは公式代理店なので、本来ならJOC以外からチケットを入手することはご法度なのだが、これだけの異常事態、緊急事態では何とかせざるを得ない。公式スポンサーや関連団体枠のチケットを入手できないか、非公式にいろいろと可能性を探り始めている。

 ところが、こちらが動き始めると、中国の現地スタッフに複数の中国人ブローカーが接触してきて、〝日本選手が出場する競技のチケットを買わないか〟と持ちかけてきた。もちろん、本部からはそうしたダフ屋まがいの売り込みは拒否するように指示しているが、最終的にチケットが確保できなければツアーは組めない。スタッフの中には〝今のうちに買ってしまいましょう〟と言う者もいる」

 そういうことか。ここでもまた、日本は〝脅せばカネを出すカモ〟と見られているわけだ。公式配分枠を絞るだけ絞って旅行代理店や観戦客を慌てさせ、頃合いを見て〝中国国内向け〟のチケットを手にした中国人ブローカーが登場し、チケットを高値で売りつけようという汚い商売である。

「あるブローカーは、ホテル3泊とチケットのセットで、競技によって30万~40万円と吹っかけてきた。JTBでも入手できなかった女子柔道48㎏級のチケットも持っていて、そちらはチケットのみで40万円という金額だった」(同前)

ダフ屋の背後にチラつく共産党大物の黒幕
 あえて言えば、大イベントであればあるほど、この手のダフ屋ビジネスは横行する。公平を期すために言うと、日本で開催されたサッカーW杯でも、日本の業者が闇組織と結託し、海外のファンにチケットを高値で売りつける行為は起きた。

 しかし、今回のケースが特に陰湿なのは、怪しげなブローカーのバックに中国当局の影がチラつくからである。前出の代理店中国部門幹部は憤りを隠さない。

「売り込みに来るブローカーたちは、非常に的確にこちらのニーズを把握しています。まるで、われわれがJOCを通じて、どの競技のチケットを入手し、どの競技を入手できなかったか、はっきり知っているようです。日本で人気の高い競技ほど配分が少なかった点から見ても、五輪組織委員会とブローカーたちはグルか、それが言いすぎなら〝緊密に連携して〟動いているとみて間違いない」

 通常、ダフ屋行為は大きなリスクを伴う。犯罪であることはもちろんだが、仕入れたチケットは株券などとは異なり、競技の日までに売りさばかなければ紙くずになるからだ。日本でも野球場やコンサート会場の周辺などで違法なダフ屋が暗躍しているが、最初のうちは高値で売っていても、試合やコンサートの開始が近づくと、「ペアで1000円」などと投げ売りを始める様子がよく目撃される。

 ところが、当局のチケット配分情報を正確に把握し、しかもダフ屋同士も連携しているとなれば、売り抜けないリスクを恐れた〝パニック売り〟は起きにくくなる。事実、業界関係者によれば、海外旅行を伴う五輪チケットの場合、過去の例から1か月前には闇市場でも価格が暴落するのが通例というが、先の代理店幹部は「いまだに投げ売りや値崩れは全く起きていない。〝谷亮子を見たいなら40万円払え〟というラインから全く下がってこない。われわれは、こんな馬鹿馬鹿しい交渉に乗る気はないが、すでに客にツアーを売ってしまったのにチケットが確保できていない代理店は、最後には赤字覚悟で買わざるを得なくなるかもしれない。恐らく奴らは、〝必ず日本で○枚は足りなくなる〟というところまで把握しているのだろう」と言う。

 中国の政治・行政事情に詳しいジャーナリストによれば、五輪チケットの闇市場は、完全に権力者によってコントロールされているのだという。

「ダフ屋といっても、日本のような暴力団の末端組織とは全く違う。五輪組織委員会とも通じる共産党の大物が黒幕になっている正式な旅行代理店が、そうしたブローカー行為をしているケースがほとんどです。値崩れが起きないのは、確かに日本側のニーズを把握しているということもあるでしょうが、もうひとつは黒幕の大物が最終的にはチケットを買い取ってくれるという安心感があるからだと思います。黒幕にすれば、日本人に安く売るくらいなら、自分の権力を誇示するため、国内の取引先や関係者、親族などに配ったほうが〝有効利用〟になると考えているのでしょう」

 チケットだけではない。今回は、外国人観光客が好む高級ホテルなどが、「キャンセル不可。値引きなし」という超強気の営業をかけて各国の旅行代理店を閉口させている。そうした動きを含め、中国が国ぐるみで〝五輪ビジネス〟で外貨を搾り取ろうとしているなら、それこそこんな五輪はボイコットしたほうがいい。

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