【北京五輪】やっぱり危ない2
中国各地で爆破事件・暴動激発
やっぱり危ない!北京五輪
(2008年7月31日(木)0時0分配信 読売ウイークリー
掲載: 読売ウイークリー 2008年8月10日号
文=読売ウイークリー 菊池嘉晃)
不正追及の住民には報復
さらに中国で問題なのは、共産党一党独裁のため、住民が、行政幹部らの不正をただす手段がないことだ。不正をただそうとすると、逆に報復されたり、濡れ衣を着せられて逮捕されたりすることも多い。
阿古智子・学習院女子大学准教授は、かつて中国の農村部で地方政府幹部の公金流用や着服を追及した農民から話を聞いたことがある。
「不正を追及した農民のリーダー格は地元警察に拘束され、殴られたり、水を大量に飲まされたりする拷問を受けたと訴えていました」
また、本誌が中国沿海部の弁護士に取材してわかったのだが、この弁護士が地方政府幹部の不正に関連して詐欺罪の濡れ衣を着せられた被告の弁護を担当したところ、警察が同弁護士の事務所まで来て強い圧力を加えたという。前述の四川大地震のおから工事で、地方政府を批判していた大学の元教員も今年6月、国家転覆扇動容疑で拘束された。
地方で解決できない問題を中央政府に直訴しに北京までやってくる人々も多い。そうした陳情者も、地方から追ってきた警察関係者によって頻繁に拘束される。
陳情者らと直接面談して実情を調査した阿古准教授は、
「地元に帰るよう命令され、従わない陳情者の中には、精神科病院に入れられて注射を打たれた人もいる。地方政府が北京周辺のホテルの地下などに設けている“ヤミ監獄”に入れられたりするケースも多い」
と指摘する。
こうした地方幹部の腐敗ぶりは、中国では誰もが知っているため、わずかなきっかけで住民らの堪忍袋の緒が切れて、暴動へつながるのだ。
「近年の暴動では、行政のみならず、司法や警察権力に対する不満が爆発しています。法治が徹底されず、警察によって濡れ衣を着せられる庶民がいる一方、幹部は特権を使って罪を逃れたり、軽くしてもらったりする。そして、行政・司法・警察はヤミ社会とつるんで金儲けまでしています。中国でHIV感染が拡大したのも地方政府が絡んだ血液売買ビジネスが原因で、そのため当局はHIV感染者の支援活動を行う人々も警戒し、拘束する例もあります」(阿古准教授)
そればかりではない。臓器移植も、司法関係者らの金儲けの手段になっているという。ジャーナリストの城山英巳氏の著書『中国臓器市場』(新潮社)によれば、中国のドナー(臓器提供者)の9割以上を死刑囚が占めており、死刑執行の情報を臓器の「手配師」に教えた裁判所関係者には、報酬が支払われるという。なんという腐敗ぶり。
火種封じに大量拘束
北京五輪に合わせて、腐敗や体制そのものへの反発が爆発するのではないか――という恐れからか、当局による大量拘束・拘禁が行われてきた(表参照)。対象は、北京に集まる陳情者やチベット、ウイグルなどの活動家はもちろん、当局に批判的で人権問題などを訴える人々や、HIV感染者の支援者、強制立ち退きなど社会的な問題に取り組む弁護士や作家、ジャーナリスト、キリスト教地下教会組織、気功集団「法輪功」の関係者らで、「国家転覆扇動罪」に問われるケースが多い。
「中国では、国家転覆扇動罪など国家の安全に関する罪が主立ったものだけで12、その他に公共の安全を脅かす罪が同じく55も定められています。定義もあいまいで、政権に都合の悪いことがあれば、いつでも捕まえられるようになっています。北京五輪を前に各地域の警察が、あとで問題が起きて中央から責任を問われないよう、あらかじめ活動家など“臭いもの”には蓋をしてしまおうと、次々に拘束していると考えられます」(前出の富坂氏)
こうした大量拘束に対して、アムネスティ・インターナショナルなど国際的な人権団体が、「中国当局は五輪招致時に『人権状況を改善する』とした約束を守っていない」「新疆ウイグル自治区などでは、当局の厳しい治安対策を正当化するために『テロリスト』の脅威を誇張している懸念がぬぐえない」などと、強く批判している。
中国国内でも、根本的な問題を放置したままの強引な取り締まりは、当局への反発を一層高めかねないため、大規模な暴動が発生した地域などでは、地方政府幹部が“見せしめ”に更迭されることも多い。しかし、
「根本的な問題に手をつけると、中央の政治家の責任問題や、共産党支配そのものに響いてくるため、当局はその場その場の対症療法を繰り返している」
と、阿古准教授は批判的だ。
そもそも、こうした対応で果たして五輪を滞りなく開催、実施できるのか。当局は、警備に史上最大規模の11万人を投入し、北京近郊に地対空ミサイルまで配備して万全の態勢を強調してきたが、今回起きた昆明のバス爆破事件によって、標的となったバスの安全対策が北京でも盲点だったことと、北京以外の地方都市では警備そのものが手薄なことが判明した。
たとえ五輪期間中はしのげても、中国社会の底辺に渦巻くマグマはなくならない。日本の中国経済への依存度が高まるなか、内部に深刻な矛盾を抱えたまま疾走する隣国がひとたび混乱に陥れば、日本にとって他人事(以降、欠け字)
ネット言論も当局が徹底統制
独立中国ペンクラブ 張 裕さん
昆明の爆破事件では事前に予告メールが流れたとされ、北京五輪でも、同様の「爆破予告」が出回る恐れも取りざたされている。しかし、いまや2億人以上が利用するインターネットに対しても、中国当局の規制は徹底している。
非政府系の「独立中国ペンクラブ」獄中作家委員会事務局長の張裕さん(スウェーデン在住)によると、ネット上の言論を監視する「インターネット安全検閲のための特別警察」は公安部(警察)系統だけで約5万人いる。これとは別に、国外に関係する事件を扱う国家安全部系統のネット警察もあり、こちらは内容が一切不明だという。2001年以降、ネットで政府批判を行ったとして、有罪判決が出たケースは28件に上り、うち24件が国家転覆扇動罪とされた。当局筋の情報をネットに掲載しただけで長期間拘束されているジャーナリストもいると、張さんは批判する。
「当局は政府批判の言動が広まるのを警戒し、最新技術ですべて検閲している。私が中国国内の仲間と通信する際にも特定のメールが届かないケースがあります。ネットカフェにも利用者を監視するソフトがインストールされ、携帯電話のショートメールもコントロールしています。中国では現在、政治的な主張ができるウェブサイトは、存在できません」
また、当局の指示を受けてネット上に政府寄りの意見などを書き込んで世論誘導する「ネット評論員」が存在する。
独自入手ネット誘導マニュアル
本誌が中国の関係筋から独自に入手した「全国各省市のインターネット評論員の研修用資料」と題するマニュアルにはこう記されている。
「総則:インターネット世論戦争は中国の国家政権の生死存亡にかかわる。祖国の繁栄と富強のため、中華民族の復興のため、インターネット評論員は常に知恵と努力で共和国を守るためのインターネット戦線に備えなければならない」
さらに、1時間に1度はメールボックスを開いて上級の指示がないか確認すること、自らの身分を隠して複数のハンドルネームで文章を書きわけること、必要なら「より人騒がせなニュース」を作ることなどを指南している。
何度でも言う。
参加・観戦予定の日本人の皆さん、遺書のご用意を。(冷笑)
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