馬鹿は
「ガラスの天井」は壊したか 撤退ヒラリーの今後
(2008年6月11日(水)0時0分配信 読売ウイークリー
掲載: 読売ウイークリー 2008年6月22日号)
米大統領選の民主党候補は、バラク・オバマ上院議員(46)に決まり、ヒラリー・クリントン上院議員(60)の米大統領への挑戦は、ひとまず終わった。ヒラリーは「ガラスの天井」に屈したのか、それとも吹き飛ばしたのか。
オバマ氏は6月3日、「米国は歴史的瞬間を迎えた」と高らかに勝利宣言した。同日のモンタナ、サウスダコタ両州予備選結果や特別代議員の支持で、指名に必要な代議員総数の過半数を獲得したのだ。
今後の焦点は、約1800万票を獲得したヒラリー氏の処遇と、本選に向けた挙党体制作りだ。そこで浮上しているのが、オバマ・ヒラリー両氏が正副大統領候補として組む「ドリームチケット」。オバマ氏の支持層は黒人、若者、富裕層と固定化しているため、ヒラリー氏を取り込めば、中高年や労働者階級の白人、女性、ヒスパニック票も期待でき、党の亀裂修復も図れる。
副大統領候補案には、ヒラリー氏も前向きに検討すると示唆した。同氏の狙いは何か。
ジャーナリストの堀田佳男氏は、「ヒラリー氏は健康保険改革に熱心に取り組んできた。副大統領として担当者になり、改革を成し遂げたいのだろう。それに、大統領に就任したオバマ氏に暗殺などの不測の事態があれば、副大統領のヒラリー氏が大統領に昇格できる」と見る。
オバマ氏暗殺の危険性は選挙戦当初から指摘され、ヒラリー氏自身も5月下旬、ジリ貧状態なのに撤退しない理由として、1968年の民主党指名争いで凶弾に倒れたロバート・ケネディ上院議員を引き合いに出し、「オバマ暗殺」を内心“期待”しているとも受け止められる失言をした。
果たして、ここまで激しく争った2人がコンビを組めるのか。
堀田氏は、こう指摘する。
「しこりがどの程度残っているのかわからないが、オバマ氏が上院議員に初当選した2004年当時から、2人は仲が良い。両者ともリベラルで、法案を共同提案したこともある。オバマ氏が『2人の健保制度改革案は95%が同じ』と語ってもいて、エネルギー問題やイラク戦争など政策面での共通点も多い」
ビル氏の副大統領候補案も
オバマ氏が副大統領候補に、ビル前大統領を指名するサプライズもあり得るという。
「クリントン夫妻は、どちらもホワイトハウスに戻りたがっている」(ニューヨーク・タイムズ紙)といい、ビル氏も満更ではないようだ。
平林紀子・埼玉大教授は、
「オバマ氏の未経験を補って余りあり、ビル氏もトシだから必要以上にオバマを食いすぎることもない。夫が2期つなぎ、16年大統領選でヒラリー再出馬の足がかりを築く狙いではないでしょうか。オバマが簡単に受け入れる話ではないし、法律上可能かどうかわかりませんが、オバマ陣営の副大統領候補を選ぶ担当者が選択肢の一つと考えているのは事実のようです」
と話す。ヒラリー氏にとっても、ホワイトハウスと上院の両方に影響力を行使できれば「鬼に金棒」(平林教授)というわけだ。ただ、ブッシュ・クリントン政権からの「変革」を掲げるオバマ氏が、ビル氏かヒラリー氏をホワイトハウスに入れることは、オバマ氏のメッセージと矛盾し、支持者の熱意をそぐ恐れがある。
副大統領候補の話が実現しなくても、ヒラリー氏が、今後も政治キャリアを積み上げていくのは間違いない。3日の演説でも、「人生の限り、戦い続ける」と強調していた。
在米経験の長いジャーナリストのステファン丹沢氏は、
「ヒラリー氏は上院議員として活動を続けながら、上院院内総務を狙うのではないか。虚栄心を満足させ、発言力も強いため、ライフワークの健康保険改革も前進させることができる。ニューヨーク州知事選に出馬する手もある。大規模州の知事は上院議員より格上で、独立性も高く、思い描く政策も実行に移せる魅力的なポストだ」
という。12年の次期大統領選再出馬も当然、選択肢に入っているはずだ。
今回の予備選について、前出の平林教授はこう語る。
「ヒラリーは理想と熱意に燃えて長い予備選を戦い抜き、それによって女性最高の地位を押し上げ、女性の社会的成功を阻む『ガラスの天井』を吹き飛ばした」
表向き女性に広く門戸が開かれているように見えても、実際には目に見えない障壁があることを「ガラスの天井」と表現する。強靭な精神力と強烈な個性を兼ね備えるヒラリー氏だからこそ瀬戸際を何度も切り抜けて躍進してきたが、それゆえに最後の最後で敗れた側面もある。「ナウ・オア・ネバー」(今しかない)の好機を逸したことに落胆する女性も多い。
しかし、その一方で、大貫恵美子・米ウィスコンシン大教授は、
「ヒラリー氏は失言が多く、オバマ氏に対して悪辣な中傷攻撃を仕掛け、大きな反発を買った。米国では女性による女性の攻撃はタブーだったが、フェミニストのヒラリー批判も多かった。タブーは破られてしまったのだ。人間としての信念のないこと、自分の野心が中心であることを露呈し、アフリカ系米国人の信頼を失い、仮に12年大統領選に再出馬しても難しいはずです」
と厳しく批判する。
まずは自らの「引き際」を取引材料に、将来を見据えてどんな条件を引き出すか。「ジ・エンド」(CNNテレビ)を迎えても、ヒラリー氏の闘争は終わらない。
(本誌 大屋敷英樹)
死ななきゃ治らない?(冷笑)
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