【支那】内ゲバ?(上)
少数民族ばかりか富裕層も党幹部子弟も〝反政府同盟〟に参加
チベット弾圧、台湾陥落の「中華帝国の暴走」に世界の華僑から「共産党独裁反対」の大合唱
(2008年4月28日(月)0時0分配信 SAPIO)
掲載: SAPIO 2008年4月23日号
台湾総統選の馬英九勝利は中国にとって「いいニュース」だと伝えられているが、チベット、ウイグル問題などと合わせて考えると、実は「対中包囲網」になりかねない芽を孕んでいる。チベットに深い人脈を持ち、台湾総統選を現地取材した王進忠氏がレポートする。
中国政府によるチベット弾圧がますます強まっている。
現地からの情報によれば、新たに中国当局に拘束されたチベット人たちが、ラサと青海省西寧を結ぶ青蔵鉄道で強制移送されているというのだ。
「〝囚人列車〟の行き先は、おそらく甘粛省、青海省などの『労改(=強制労働収容所)』だ。毛沢東の文化大革命時代にも大量のチベット僧が殺害されたり、労改に送り込まれたりした。当時から中国政府はラサの世界遺産ポタラ宮の周辺にいくつも労改をつくり、〝反共分子〟のチベット人を収容して、強制労働させてきた。今回はチベット人を一斉に拘束したため、収容できなくなって自治区外にも移送しているのだろう。これは第2次文革だ」(現地関係者)
ラサの寺院では兵糧攻めに遭っているチベット僧の餓死者が出始めたとも言われる。
中国は、これらの情報に対して政府声明以外にも、「海外メディアなどがチベット虐殺の〝偽造ニュース〟を流している。あくまで暴動鎮圧だ」と中国中央電視台のコメンテーターなどを使って反撃に出たが、チベット弾圧情報は中国の情報封鎖をかいくぐって漏れ伝わるごく一部であり、現地ではもっと甚大な被害が発生しているだろう。
ただ、チベットも防戦一方ではない。ダライ・ラマは、4月中旬から6月まで、アメリカ、インド、ドイツ、イギリス、オーストリアなどを歴訪する。表向きは人権やチベット仏教に関する講演目的だが、むろん中国政府の弾圧の現状を世界にアピールする最大のパフォーマンスとなる。
直下の北京五輪もあるが、中国がこれほどチベット問題に敏感になるのはウイグル、内モンゴルそして台湾の分離独立に繋がるからだ。事実、中国当局への反発はチベットからウイグルへ延焼し始めた。
私が現地取材した台湾総統選でもチベット問題は選挙終盤で最大の焦点となった。
台湾で連日トップニュースのチベット弾圧
台湾住民は、チベット問題に対する関心が極めて高かった。近い将来、台湾がチベットのように弾圧、統一されるという恐怖が広がったためだ。
実際、連日トップニュースで報じた台湾メディアは、銃殺された僧侶、武装警察や装甲車、戦車まで総動員してチベット民衆を〝取り締まる〟中国当局の様子を流し続けていた。台湾メディアは外省人系(中国系)が押さえているというが、今回はチベット側の視点で事件を報じるメディアが多かった。
台北市の「自由広場(元・中正紀念堂)」には多くの台湾人が訪れ、ハンガーストライキを断行するチベット人を励ました。民進党の謝長廷候補はいち早くハンストに参加した。中国の危険性をクローズアップすることで、中国との経済交流促進を訴え、平和協定を結ぼうとする馬英九候補の危うさを批判したのだ。
謝候補は「馬氏が主張する『一中市場』の前提は、『一つの中国』原則であり、『台湾は中国の一部』ということ。もし、台湾がこの原則を受け入れたら、チベットのように、台湾も中国の国内問題となってしまう」と「台湾のチベット化」を訴えた。チベット問題が取り上げられるたびに、低迷していた謝候補への支持は高まっていった。
馬候補は出遅れた。なぜなら国民党は従来、「チベットは中華民国の一部」と考えており、チベット独立にも繋がりかねない今回の動きに、積極的に対応することに二の足を踏んだからだ。結局、急激に追い上げられた馬候補は、急遽、チベット亡命政府の台湾密使と裏交渉し、デモに参加した。馬候補は親中派とみなされており、事前交渉なく参加してはハンストを行なっているチベット人に面会できない可能性があったのだ。
馬候補は以下のような声明を発表した。
「中国がチベット人民を弾圧し続け、チベット情勢が悪化すれば、私が総統に当選した場合、北京五輪への参加を取りやめる可能性がある」
さらに選挙勝利後、ダライ・ラマに対しても「いつでも(彼の台湾訪問を)歓迎する」とまで言い切った。国民党トップとしては異例の発言である。
しかし、馬氏が本当にチベットを支援しているかというと、大いに疑問がある。謝氏は落選後も自由広場に通ったが、馬氏は選挙後、見向きもしていない。
70万票を手中に収めた中国
中国側は裏で、やはり馬候補を推していた。
日本のジャーナリストにはわからなかったようだが、選挙戦の最中、馬陣営には連日数百人レベルの香港人が来台し、応援していた。私は中国語の違いですぐにわかった。香港人は基本的にノービザで台湾に入境できる。もちろん彼らに投票権はないが、中国は〝出先機関〟を使って支援したとみていいだろう。馬氏もその点は十分に承知していたはずである。馬新政権は中国政府の応援を受けて産声を上げるのだ。
実際、馬氏は、当選後の記者会見で「何より中国本土との関係の正常化が必要だ」「平和協定を結ぶ」と繰り返した。仮に平和協定を結べば、中国の軍事的脅威は台湾という緩衝地帯に隔てられることなく日本に向かう。事実、中国海軍高官が、アメリカ太平洋軍のキーティング司令官に、「米国がハワイ以東を、中国が同以西の海域を分割管理し、情報を共有してはどうか」と提案している。
中国にとって太平洋に出る〝関門〟が台湾である。建軍以来、人民解放軍が解放する人民とは一貫して台湾人民だ。
中国が経済的に台湾を取り込んでしまう危険性もある。
元立法院委員で台湾独立派の理論的支柱として知られる林濁水氏は、こう指摘する。
「現在も中国本土が一番の貿易相手であるというのに、両岸共同市場(一中市場)によって、さらに本土との経済交流を強化してしまえば、貿易の大部分を中国本土と行なうことになりかねない。そうなれば経済の命運を中国本土に握られる」
実際、台湾の貿易総額に占める中国の比率は急増し、20%以上に達している。
今後の台湾政局を中国が左右する〝装置〟が成立する危険性もあるという。
「立法院で4分の3の議席をもつ国民党の政権が発足することで、同党が掲げる通信投票法の成立が現実味を帯びてきた。国外にいる台湾人が、インターネットなどを活用して選挙に参加できるようにする法律だ。成立すれば中国本土にいる70万人(100万とも言われる)の台湾ビジネスマンが、中国本土から投票することになる。便利な半面、中国本土にいる以上、陰に陽に中国の圧力がかかる。投票操作や妨害も考えられる。両岸共同市場の推進は、そうした〝中国票〟を増やす結果につながる」(蔡煌瑯・民進党元副幹事長)
もちろん中国が「馬英九・台湾」をすぐに呑み込むことはあるまい。だが、北京五輪が終われば、中国は改めてチベットやウイグル、台湾などの分離・独立派の弾圧に力を入れるはずだ。
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